あの加藤とあの課長*SS集
『陽萌…!』

『敏ちゃん…!』

『な、なんだね、君は…!』



個室に飛び込んで、陽萌の無事を確認して、とにかくホッとした。それに尽きる。


あの時のアタシは、オカマのアタシじゃなくて。

ただ陽萌を守りたい、1人の男だった。



『大丈夫、後始末は俺がするから。』



なーんて言っちゃってさ。

本当、アタシの信念をいとも簡単に打ち砕く女だったわ。



『アッキー、ちょっと今時間いい?』



それからすぐに元常務と専務のことをアッキーに報告した。

2人は降格。
クビにしてもいいくらいだったのに。



『あの2人はあれでいてデキるからな。いてもらわないと困るんだよ、残念ながら。』



そう笑ったアッキーは、何を考えているのかよく分からなくて。



『この、加藤さんといったか。』

『えぇ。』

『彼女は、生渕くんと付き合っているのかね?』

『そうよ。もう、源にも毎日のように惚気聞かされちゃって、参ってるわ。』



なんて。

アッキーに、この情報を渡したのは、不本意ながらも、アタシだった。
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