あの加藤とあの課長*SS集
それから少しして、陽萌が大阪に出向になった。

多少の疑問はあったものの、スルーできる程度のものばかりだったけれど。


陽萌のところに遊びに行って帰って来たアタシは、当然のようにアッキーにお土産を持って行った。



「大したものじゃないけど、まあ気持ちだけでも。」



そう言って渡すと、いつものように嬉しそうに受け取ってくれる。



「彼女は元気だったかね?」

「え?」

「加藤くん…といったか。」

「え、えぇ。元気だったわよ。」



アッキーが一社員の名前を覚えているなんて珍しい。

源くらい成績を残していれば話は別だけど…。



「…まだ、生渕くんとは仲良くやっているのかね?」

「……えぇ。」



初めて、アッキーに疑問を感じた。



「ねぇ、アッキー…。」

「敏には話しておいても構わないだろう。」



社長室、デスクの大きな椅子に腰掛けたアッキーは、デスクに肘をつき指を絡めた。

そして、嫌な笑みを浮かべた。



「私は随分と前から生渕くんに目をつけていてね。娘の婿にと思っているんだよ。」



どうしていいか、分からなくなった。
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