あの加藤とあの課長*SS集
晋三

自分の心に素直になれ

こじんまりとした居酒屋で、肩を並べてビールを呑みながら談笑する。

帰宅前のサラリーマンの、至福の一時。



「いいんですか? こんな所で油売ってて。」

「たまには息抜きしてこいってうるさくてな。」



そう苦笑するのは、僕の大好きな人の旦那さんである、生渕 源その人である。

相変わらず課長である彼は、今や一児のパパでもある。



「俺としては、陽萌やチビといる時が至福の一時なんだけどな…。」



なんて恥ずかしげもなく言うもんだから、こっちが照れてしまう。


そういうのは陽萌に言えばいいのに。僕に言ったって意味ないぞ。

そう目線で訴えると、それに気付いた課長はそっぽを向いた。



「陽萌が信じないんだ、仕方ない。」



そう言われてしまったら、もうどうしようもない。陽萌は変なところで驚くほど頑固だから。



「すみません、生2つ。」



双方のジョッキが空いたのを確認して、課長は店員さんにそう声をかけた。
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