あの加藤とあの課長*SS集
そういえば、陽萌に好きって言われたこと、なかったな。

俺が『好き』って言うと、いつも『うん』とか曖昧いに流されていた気がする。


好きだったのは俺だけ。

ううん、それでもいい。いいからさ、帰ってきてよ…、陽萌…。



どんなに失意の縁にいても、会社を休むことだけはしなかった。

恋愛以外はどんなことにも真面目だった陽萌のことだから、そんなことしたら怒るんだろうなと思ったから。



それから梅雨が終わり夏が来て、秋が来て冬が終わって春になって。

幾度目かの梅雨を目の前にしたある日、俺は某スーツ会社の廊下を歩いていた。


縁あって始めたデザイナーの仕事が大当たり。


今日はこの会社とのコラボ商品の話で来た。けど、本当は断るつもりだった。

実は、フランスの有名なデザイナーが俺を見初めてくれたらしくて、声がかかったんだ。
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