あの加藤とあの課長*SS集
陽萌といる時間は幸せだった。

コラボ商品の話を武器に陽萌を縛り付けてる俺って、本当に無様でかつ最低。


どうにか押せば、陽萌は落ちるんじゃないか。

それが惚れるとかじゃなくても、ただ、俺のところに戻ってきてくれるんじゃないか。

そんなことばかり考えていた。



考えるときは呑みながらっていうのが、俺の流儀。


行きつけのバーで、グラスを眺めながら流れくるジャズに陽萌を思い出した。

ジャズ、好きだったもんな。連れてきてやりたいな…。



「隣、いいですか?」



不意にかけられた低音ボイスに、男かよと少なからずがっかりしながら「どうぞ」と言った。

ふと隣に腰かけた彼を見て、俺は固まった。


コイツは…。



「初めまして、ミナトさん。」

「…よく分かりましたね。」

「そりゃ、把握してますよ。部下がお世話になっているんですから。」



やっぱり。

あの日…、陽萌といた奴だ。
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