あの加藤とあの課長*SS集
梅雨の湿気を感じさせない図書館はまさに快適だった。

どこかに腰掛けて、少しばかり仮眠をとろう。寝相は悪くないと自負しているつもりだ。


空いている席を探して歩き出した俺は、なんだか珍しいものを見つけてしまった。


今どき紙辞書を使って勉強する子がいるのか。



後ろ姿だから何とも言えないけれど、彼女が放つ独特の雰囲気は人を引き付ける。

俺もそれに当てられた１人だ。


好奇心に負けた俺は、本すら持たずに彼女の向かいに腰掛けた。


（うわ…。めちゃくちゃ可愛いじゃん…。）

万人に好かれる顔だと断言できる。


セミロングのストレートヘアに、目の上で切り揃えられた前髪。それがまたツボ。


細くて華奢で、色白で。

この子は、誰もが羨むありとあらゆるものを持っている。


髪を耳にかけるその仕草なんかも、すごく好きだ。


しばらくそうして観察していると、さすがに気が付いたらしい彼女が顔を上げた。



「あの、なんですか？」
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