あの加藤とあの課長*SS集
嫌でも耳に入ってくる。いや、会社中の誰もが知っている話だ。

男を取っ替え引っ替え、一晩の関係だって日常茶飯事。



『僕は、そんな奴らの1人にはなりたくないんだよね。』



なるほど。

陽萌は友達とそういった類いの男との間にはきっちりと境目をつけている。



『僕は友達でもいいんだ、ずっと、そばにいれるなら。』



俺はお前のことを尊敬するよ、晋三。

俺はお前みたいにできた男じゃないし、広い心を持って構えてなんていられない。


陽萌が他の男のものになるのを黙ってじっと見てなんて、いられない。


できることならこの腕に抱いて、そのままずっと、俺だけが独占したい。

……なんか、気持ち悪いな、俺。



『分かるよ、直人の気持ち。直人の言いたいことも。』



そう言って、陽萌に向けていた視線を俺に移した。



『でもね、僕らには立場ってものがある。もう、子供じゃないから。』



そうだ、俺には晋三にはない強みがある。

俺は晋三と違って同じ部署じゃない。それは共有するものの少なさも意味するけど同時に、違う部署だからこその割り切りやすさもある。
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