あの加藤とあの課長*SS集
我に返った瞬間、罪悪感に苛まれて、眠る陽萌をそのままに、その場から逃げ出した。


そんな俺の耳に陽萌が倒れたという話が入ってきたのは、その日の夕方だった。

しかも、その一報を寄越したのは皮肉にも、生渕さんだった。



『俺は昨日お前に言ったばかりだよな。』



会社のすぐ側の公園に呼び出されて、こうして生渕さんと対峙している。

そんな彼の表情にはいつものような余裕なんてあるはずもなく、怒りを露わにしている。



『……。』

『また黙りか? …まぁ、別にそれでも構わないが。』



黙りこくる俺に、生渕さんは淡々と言葉を続けた。



『今加藤は家にいる。今日の分を取り戻すために、家で仕事をしかねないから、見張りに今泉をつけた。』



本当の狙いは、それだけじゃないんだろ…?

俺は拳に力を込めた。



『絶対、加藤に近付くな。少なくとも、この土日は。』

『…分かりました。』



今は会わせる顔なんてない。



『それだけだ。』



そう言って、颯爽と去って行く生渕さん。

陽萌のためにも…、俺のためにも、もう、潮時なのかもしれない。
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