あの加藤とあの課長*SS集
待ち合わせは、2人でよく行った俺の行きつけのカフェ。

連絡を寄越したのは、陽萌。



『別れて。』



淡々と告げられた言葉を、俺は拒否する権利なんてない。

あれだけ陽萌を苦しめたんだから。



『…はっ、やっぱり生渕さんか。』



さすが、手が早いな。

なんて思ったけど、そんな俺の思いは、陽萌の言葉で掻き消された。



『え?』

『俺、あの人に宣戦布告されてたんだよな。』

『ちょっと待って、話が見えない。』

『は? 生渕さんに乗り換えんじゃねーの?』

『…そんなわけないでしょ。』



陽萌は俺の言葉で、何かに気付いたらしい。

あーあ、墓穴。


とはいえ、まだ確信には至らないようだ。


こりゃ、生渕さんも思いの外苦戦すんじゃねーの?

そう思ったら、なんだか楽しくなってしまって、思わず笑みが零れた。



自分でも意外だった。こんなにスッパリ別れられるなんて。

未練は残りそうだけど、陽萌に迷惑かけない程度では…、収まるだろう。
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