あの加藤とあの課長*SS集
さらさらと注文するその姿に、なんだか不思議な感じ。

焼鳥って、ビールって。



「課長ってワインのイメージです。」



なんかこう、オシャレな大人の男って感じ。

カウンターに隣り合わせに座ってそう言うと、課長はおしぼりで手を拭きながら顔をしかめた。



「どんなイメージだ、それ。」

「お、オシャレな大人の男の人ってイメージが強くて。」



思わず苦笑いしながらそう言うと、課長はふーんと鼻を鳴らした。

ふーんて。それだけですか。



「あの。」

「ん?」



運ばれてきたビールに口をつけながら、横目だけで私を見る。

そんな姿もかっこいい。



「“源さん”って、呼んでもいいですか?」

「あぁ…、構わない。2人のときだけに限るが。」

「ありがとうございます。」



やった!
って、そんなに喜んでもいられない。

だって放っておいたら、会話が途切れる。彼は私と話す気はあまりないらしい。



「……あの。」

「何。」



今度は、こちらを見ることすらない。

……何度目の確認になるだろう。私、この人の彼女だよね? ……仮にも。



「……なんでも、ない、です。」
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