あの加藤とあの課長*SS集
どうしよう、何を話して良いか、全然分からない…。

そんな私を他所に、食事とお酒は進んでいく。



「…あの、源さん。」



この空気にも慣れてきた頃、私は気になっていたことを訊ねようと口を開いた。



「なんだ。」

「どうして、OKしてくれたんですか?」



返ってくる答えなんて、先輩の話からなんとなく想像はつくし。

どっちにしたって、傷付くだけなのに。


何訊いてんの、私…。



「…別に付き合ってる奴もいなかったし…、断る理由もなかったからな。」



30男の発言とは思えない。


この人、今までちゃんした恋愛ってものをしてこなかったんだ。

そりゃそうだ、放っておいても向こうから寄ってくるくらいだもん、求めることも、まるでなかったんだろうな…。



「そう、ですか。」



なんとか声を絞り出して、頼んでいたビールに手を伸ばした。



「…逆に、増田は。」

「へ…。」

「増田は、なんで俺と付き合おうと思った。」



まさかの切り返しに、私は間抜けな声を出してしまった。

なんで、って…。
< 42 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop