あの加藤とあの課長*SS集
キスをしても、抱かれても、…心が満たされない、愛を感じない。

私の部屋のベッドから、独り桜を見た。


隣に眠る源さんは、今日は誰を想っているのだろう。源さんの部屋には、行ったことがない。



「本当はもう…、気付いてる…。」



あの晩以来、私はちゃんと“源さん”という人を見るようになった。

そしたら…、面白いくらい簡単に分かってしまった。



「加藤さん、なんですよね…。」



ぐっと、唇を噛み締めた。


接し方、表情、雰囲気…、すべてが、違うんだもの、他の人とは。

加藤さんが、好きなんでしょ…?


源さんが気付いているかは分からない。



「不器用な人…。」



好きです。

あなたを知れば知るほどに、どんどん惹かれていくのに、現実を突きつけられる。



「源さん…っ。」



好きです。苦しいくらいに。

こんな風に涙が出るほど人を好きになったのは、初めてです。
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