あの加藤とあの課長*SS集
桜の花びらが散る頃、加藤さんが課長補佐に昇進した。

指名したのは前の課長補佐だって言うけど、そんなはずない。裏で糸を引いたのは、源さんだ。



「加藤さん、コーヒーどうぞ。」

「あ、ありがとう…。」



引きつった笑顔を浮かべる加藤さん。

コーヒーを飲めないのなんて知ってる。課どころか、社内でも有名な話。


源さんと加藤さんの話はどこまでも広がっている。


プロフィール的なものから、交際関係まで。

なんだかんだ、似た者同士。



「加藤さーん、僕がもらってもいい?」

「晋ちゃん…。うん、どうぞ。」

「ありがとー。」



この人はいつも、誰かに守られている。

思わず今泉さんを睨み付けると、それに気付いた今泉さんは肩をすくめて見せた。



「…増田。」

「…はい。」

「なんだ、あの嫌がらせは。」



源さんにはすぐバレてお叱りを受けるし。



「…別に。」

「はぁ……。」



どでかい溜め息を吐かれても、面白くないものは面白くないんだもん。

加藤さんが、羨ましくて堪らない。
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