あの加藤とあの課長*SS集
翌日、図書館に行くと、いつものように彼女がいた。



「加藤 陽萌ちゃん。」



名前を呼ぶと、大きい瞳をこれでもかと見開く彼女。



「…名前。」

「まさか君が陽萌ちゃんだったとは。」



いつも通り彼女の向かいに腰掛けて、片肘をつき、手の上に顎を乗せた。


陽萌ちゃんといえば、男タラシで有名だった。

まさか陽萌が本名だとは思わなかったけど。



「ヒメってさ、お姫様の姫だとずーっと思ってたんだよね、俺。」



今年入ってきた、短期の子。

次から次へと男と関係を持っては…なんて噂は嫌でも耳にしたことがある。



「…由来はお姫様の姫なんですよ、湊さん。」

「…へぇ、俺のこと知ってたんだ?」

「まぁ、一応程度には。」

「なら話は早いよね。」

「……何か。」



急に警戒心をびしばし放つ彼女に、たじろいたのは俺の方。

(突然…?)


いや、きっと用心深い子なんだろうな。今までは上手いことそれを潜めてたってとこか…?
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