あの加藤とあの課長*SS集
「はーあ。」



送ると言う今泉さんを振り切って独り、夜道を歩いて帰ることにした。


なんで、私が好きになる人って、いつも加藤さんが好きなんだろう。

その辺に転がっていた空き缶を蹴飛ばしてみた。


辺りに響くカランカランという音が寂しさを掻き立てる。



「……加藤さんはこんなこと、しないか。」



加藤さんなら、どうするんだろう。

空き缶拾って、ゴミ箱に捨てるのかな。


しゃがみ込んで空き缶を眺める。



「……馬鹿みたい。」



入社してからというもの、こんな風に考えるのは何度目だろう。

(しょうがないよね…、全部…。)



加藤さんは女の私から見ても良い人だと思う。


見た目も非の打ちどころがないし、中身だってそうだし。

プライベートの方でちょっと甘ちゃんなところがあるけど、そこがまた可愛かったりするし。


惚れちゃうのも、分かるよなぁ…。



「…すごい惨め。」



瞬きをすると、涙が零れ落ちた。

お酒は入ってないのに。


そのときバタバタと足音が聞こえた。


どうせ酔っ払いだと思って放っておいてくれるだろうと、涙を拭いもせずにいた。
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