あの加藤とあの課長*SS集
「増田ちゃん…!?」

「え…?」



振り返ると、息を切らした今泉さんがいた。

なんで…?



「やっぱり心配でさ!」



ちゃんと丁重にお断りしたはずなのに。まったく、この人は…。

まぁ、しつこかったもんなぁ。



「って、どうしたの? そんな所にしゃがみ込んで…、って、え、泣いてる!?」



と突然慌てだした今泉さん。



「具合でも悪い!?」



その表情は本当に私を心配しているようで。

狼唄える彼がおかしくて思わず笑ってしまった。



「え? ま、増田ちゃん…?」

「大丈夫です、なんでもありません。」



スッと立ち上がると、はてと首を傾げる今泉さん。


うん、こういうところも好き。

なんて、この人は夢にも思わないんだろうな。



「あ、もしかして課長のこと思い出してうるっときたとかー?」



ほら、ね。



「そんなんじゃありませんー。」

「えー、じゃあ何ー。」

「内緒ですー。」



さっきまで寂しかった夜道が、一気に温かなものになった。
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