あの加藤とあの課長*SS集
「待ってよ、増田!」



加藤さんの送別会の後帰ろうとしていたら、江藤さんに捕まってしまった。


この人、社員旅行のときに一晩共にしたり、自由行動のときに出かけたくらいで勘違いして、それ以来少し…、いや、だいぶしつこい。

付き合った記憶はございません。



「なんですか。」

「俺、本気で増田が好きなんだ。」

「…で?」

「増田の考えてることとか正直言って分かんないんだけど、もし俺と同じ気持ちなら…!」



あぁ、もう!



「1度寝たくらいで彼氏面とかしないでください! 私、他に好きな人いるんで!」



そう言い返したとき、鞄を持っていなかった方の腕を引っ張られた。


私の腕を引く先を見ると、そこには予想外の人物。

江藤さんなんてポカンとしてた。



「ごめんねー、江藤。僕、先約なんだ。」



私の腕を掴んだ手を掲げて見せると、そのまま歩き出した。



「い、今泉さん…。」

「いやー、なんか陽萌を助けるときみたいな感じでさ、ついつい?」



ケラケラと笑いながら、パッと私の手を離した。

その顔を見れば、至極当然のことをしたとでも言いたげなもので。
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