あの加藤とあの課長*SS集

「ま、江藤もお酒入ってるし、多めに見てあげてよ。」



なんて笑う。

慣れがあるんだろう、私と江藤さんのトラブルの内容にも、私の発言の内容にも触れない。


なんだか、悔しい。



「…加藤さんを助けるときと同じノリでってことは、少し、期待してもいいんですか？」

「…へ？」

「少しは気にしてもらえてると、思ってもいいんですか？」



そう言った私の顔を凝視する今泉さん。

その表情からは、何も読み取れない。




「…私、今泉さんが好きです。」




今泉さんの目が、ゆっくりと細められていく。

そして、切なげに、歪んでいく。



「課長のことはもう本当に、ふっ切れてたんです。」

「増田ちゃん…。」



やっと発せられたその声は、切なさを含みすぎて掠れていた。



「……ごめんね、僕、陽萌が好きなんだ。」

「知ってます。」

「ひどいこと、してたね。」



きっとそれは加藤さんの話を散々私にしていたことを指しているんだろう。

そんな風に、思わないでほしいのに。



「私、別に嫌だって言うことだってできたんです。でも、それをしなかった。」

「…うん。」

「どんな形でも、今泉さんといたかったからです。」