あの加藤とあの課長*SS集

そう、嫌なら夕飯の誘いを断ればよかったんだ。ただ、それだけ。



「私、本気です。諦めません。」

「増田ちゃん…。」

「覚えておいてくださいね。」



ふふんと笑うと、今泉さんははーっと大きな溜め息を吐いた。

そして、困ったように笑った。



「分かった、覚えておくね。」



いつになるか分からない。

もしかしたら私が冷めちゃう方が早いかもしれないし。だって私まだ若いもんね。



「それにしても、なんで私が好きになる人は加藤さんが好きなんですかね。」

「そりゃ増田ちゃんがなんだかんだ陽萌のこと好きだからじゃないの？」

「なんだかんだは余計です。」



でも今は、こうして笑い合いながら夜道を歩くのが好きだったりする。



「好きですよ、今泉さん。」

「はいはいっ。」

「私も加藤さんになりたいなあ。」

「増田ちゃんは増田ちゃんのままでいいよ、増田ちゃんのいいとこだっていっぱいあるし。」

「……今泉さんって駄目ですねえ。」

「へ！？」



女心分かってるようで分かってないこんな人だけど、私は、この人が好き。

いつか惚れさせてみせる！