あの加藤とあの課長*SS集
「俺と付き合ってよ。」



首を傾げながらそう言うと、彼女は目をすがめて冷たく言った。



「私、今彼氏います。」

「じゃあ別れてよ。俺、本気だからさ。」

「……本気ですか?」

「うん。」



ニッコリ笑うと、彼女は思いっ切り顔をしかめた。



「無理ですよ。彼、すごく束縛する人なんで。」

「だから?」

「空手家で喧嘩だって強いんですよ。」

「うん。」



それでも、俺は負けないよ。
だってそれだけ君が欲しい。



「…私、帰ります。」



帰るだなんてちゃんと宣言してくれる辺り、可愛すぎてどうしよう。



「…傘、持ってる?」



持っていたビニール傘を掲げて見せると、彼女は窓の外に目をやって唇を噛み締めた。



「送ってってあげる。」
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