あの加藤とあの課長*SS集
2人で傘に入ると、彼女の華奢さが身に染みて分かる。



「ねぇ、濡れると悪いからもう少しこっち寄ってよ。」



細い腕を掴んで引き寄せると、心なしか体を強張らせる彼女。

え…、嘘。


男タラシで有名なあの陽萌ちゃんが…、この程度で…?



「…離してください。」



その言葉に従ってパッと手を離すと、彼女はプイッとそっぽを向いた。

可愛すぎるよ…もう…。



「陽萌ちゃん、やっぱ付き合ってよ。」

「…だからですね。」

「送り狼になっちゃうよ? 俺。」




大学からわりと近くのマンションの前で足を止めると、俺は陽萌ちゃんを見下ろした。



「送り狼…ですか。」

「…俺、結構本気だよ。」



雨で傘から出られないのをいいことに、その細い腰に腕を回してグッと引き寄せる。




「……どうなっても、知りませんよ。」

「ふっ…、ご忠告ありがと。」
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