あの加藤とあの課長*SS集
煌は拳を作ると、それをギュッと握った。



「そんなんだから友達だってできなくて、いじめられて。」



その表情は険しく歪められる。
きっと煌の心は今、悔しさでいっぱいだ。

陽萌のことになると、それが手に取るように分かる。



「これ以上、陽萌に辛い思いをさせたくない。」



真っ直ぐに俺を見据えた煌のその目は、陽萌に似ていた。



「だから、本気じゃないなら……遊びなら、陽萌には手を出さないでくれ。」



遊びか。
本気か。

目を閉じて、陽萌の顔を思い浮かべる。



「…それだけです。」



そう言って、煌は多目的室を後にした。



「何や、アイツ。ホンマ生意気な奴やなぁ…。」



その後ろ姿を見届け、1人が言った。



「生意気やなぁ…。」



俺は胡坐をかいた膝に肘をついて頬杖をつくと、溜め息を吐き出した。



「生意気やけど、芯は通っとるし、目的もはっきりしとる。」



と、ガンタが言った。


そう。アイツはただ…。

(陽萌を、守りたいだけやろなぁ…。)
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