あの加藤とあの課長*SS集
「あ、っと…。」
やっと我に返ったらしい陽萌は、誤魔化すようにえへへと笑う。
けれど、どこか悲しそうで。
「誰にやられたんや。」
何も考えることなく、俺はそう尋ねていた。
「えと、わ、分からなくて…。」
いつもの威勢はどこへやら、歯切れ悪くそう言うと、そのまま俯いてしまった。
座り込んだ膝の上で作られた拳は、心なしか震えている。
「分からないってなんや。」
「トイレ入ってるときに上からかけられたから…。」
「…随分と古典的やな。」
「汚水じゃなかったのが救いかな…。」
俯いたまま微かに笑いながら言うその声は震えていて。
「…えへ。」
パッと上げたその顔は笑っているつもりなんだろうけど、泣き顔にしか見えなかった。
「夏服じゃなくて良かったー。カーディガンとか着てるから透ける心配もないし!」
「…アホ。」
「アホってー。ひどくないですか?」
「アホやからアホやねん。」
「ひどー。」
歪み始めたその表情に気付かない振りをしながら、重い腰を上げる。
「陽萌。煌とクラス一緒か?」
「え、あ、はい。」
「分かった。」
そのまま屋上から屋内に入ると、1年の教室に歩を進めた。
やっと我に返ったらしい陽萌は、誤魔化すようにえへへと笑う。
けれど、どこか悲しそうで。
「誰にやられたんや。」
何も考えることなく、俺はそう尋ねていた。
「えと、わ、分からなくて…。」
いつもの威勢はどこへやら、歯切れ悪くそう言うと、そのまま俯いてしまった。
座り込んだ膝の上で作られた拳は、心なしか震えている。
「分からないってなんや。」
「トイレ入ってるときに上からかけられたから…。」
「…随分と古典的やな。」
「汚水じゃなかったのが救いかな…。」
俯いたまま微かに笑いながら言うその声は震えていて。
「…えへ。」
パッと上げたその顔は笑っているつもりなんだろうけど、泣き顔にしか見えなかった。
「夏服じゃなくて良かったー。カーディガンとか着てるから透ける心配もないし!」
「…アホ。」
「アホってー。ひどくないですか?」
「アホやからアホやねん。」
「ひどー。」
歪み始めたその表情に気付かない振りをしながら、重い腰を上げる。
「陽萌。煌とクラス一緒か?」
「え、あ、はい。」
「分かった。」
そのまま屋上から屋内に入ると、1年の教室に歩を進めた。