あの加藤とあの課長*SS集
「煌。」



1年の教室に顔を突っ込むと、好奇の眼差し、恐怖の眼差し、嫌悪の眼差し、様々な眼差しが俺に向いた。



「あ。」



その中で唯一、全く動じることなく俺に歩み寄る煌。

本当コイツは、ある意味大物だ。



「どうしたんすか?」

「どうしたじゃないやろ。」

「陽萌のことなら分かってますけど。ついでに犯人も。」



さすがとしか言いようがない。



「なんで放置やねん。」

「今はパニくってると思ったんで。昼休みが終わる頃に行こうかと。」

「ふーん…。」



どこまでもさすがな兄貴を見下ろしながら、どうでもいいことを考えていた。

二卵性でもやっぱ似てるな、とか。



「とりあえず、陽萌の体操着。」

「あぁ、今取ってきます。」



陽萌の体操着を取って来た煌は、小さな声で俺に言った。



「頼みます。」



何だかよく分からないけれど、認められたような気分になって。



「おう。」



そう返事をして、1年の教室を後にした。

それから保健室に寄ってタオルを何枚か借りると、急ぎ足で屋上に戻った。
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