あの加藤とあの課長*SS集
そんな俺だけど、東京の大学に進学することが決まった。


別に県内でも京都でもよかったと言えばよかったけれど、遠くに行きたかった。

それで、でかい男になって、陽萌をちゃんと守れるような、そんな男になりたかった。



「いってらっしゃい、恵也。」

「いってくるな。」

「…えへへ、なんか、送り出すのって初めて。」



転勤族である陽萌は、見送られることの方が断然多いらしく。



「…んな顔すんなや。」

「だって、寂しいものは寂しいもん。」



陽萌は妹気質だから、こういうときに困るんだ。

わりと兄貴気質な俺としては、可愛すぎてどうすればいいか迷いもんだ。


涙目になった陽萌を、そっと抱き締めた。



そのまま連れて行きたくなったけど、少なくともあと2年は我慢だ。



「電話してね、メールもしてね!」

「陽萌もな。」



惜しみながら別れ、大阪を後にした。


ガンタはそのまま大阪に残ったし、他の奴らも散り散りになって。

何となく始まった新しい日々に、馴染むのは案外簡単で。


その頃には陽萌と俺の関係は周知のもので、そこにわざわざ文句をつけにくるようなやつもいなくなっていて。



俺としては、平穏な毎日だったんだ。
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