あの加藤とあの課長*SS集
適当にサークルにも入って、アルバイトも初めて、充実した日々。

そこに、一人暮らしが始まったことによる忙しさが加わって、あっという間に月日は流れてしまった。



大学に入学して半年ほど経った頃。



「恵也ー、彼女こっち遊び来たりしねーのー?」



そうサークルの先輩に尋ねられて、ふと疑問に思ったんだ。

最後に連絡を取ったのはいつだったか、と。


俺は確かに陽萌を大事にしていたつもりだし、いつも陽萌を想っていた…つもりだった。


そのときになって、やっと気付いた。
全部、“つもり”だったんだって。

実際、俺は陽萌を大事にできていたのか。


答えは、否だった。



東京に出てきてからというもの、充実した日々の傍ら、忙しさにかまけて、陽萌を放置しがちだったのも事実。


履歴を辿るも、最後に連絡を取ったのは2ヶ月前。

すぐに電話をかけてみるも、時すでに遅し。陽萌と、連絡が取れなくなっていた。



冬休みに実家に帰った時に、陽萌の父親が転勤になって引っ越したことを知った。


陽萌の手を先に離したのは、俺だった。

だから、決めたんだ。もしももう1度会えたら、もう離すもんかって。
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