あの加藤とあの課長*SS集
願望叶ってもう1度本当に会えたときは、すごく嬉しかった。

まさか職場で会うことになるなんて。


自分でもびっくりするくらい陽萌が好きで堪らなくて。

陽萌を見た瞬間、10年なんてブランクは、どこかへぶっ飛んでいった。


それくらい好きだった。


だけど、陽萌は陽萌の幸せをもう見つけていたから。だから、俺は身を引くんだ。




「そういやーお前らって、どっちが先に告ったんやったっけ。」



陽萌が出向を終えて東京に戻った後、ガンタと呑むことが増えた。

今日もそのいい例だ。



「10年前も、今回も、言ったのは俺や。」

「お前ホンマ好きやったんやなー。俺から横取りしただけあるわぁ。」

「人聞き悪い言い方すんなや。」

「本当のことやん。」



そう。
きっと、“好き”は俺の方がでかかった。

あの頃も、そして今も。



「んで、振られたんも2回とも俺や。」

「1回目は恵也みたいなもんやろ。人聞き悪いで。」

「…そうかもなぁ。」



あんなに惚れやすかったガンタも、今では1児のパパだっていうんだから、世の中驚きだ。



「俺も、そろそろ進まんと。」

「その意気や! とりあえず今日は呑むでー!」

「おう。」



こうしていると10年前から変わらないような気もするけれど、そんなの気のせいで。

確実に、俺たちの時は流れてる。
俺だけが、止まってちゃいけない。



「陽萌よりええ女ー。」

「おるって絶対!」

「いや、おらんやろ。」



俺たちの笑い声が夜空に木霊す、そんな夜。

新しい出会いは、案外もうすぐそこまで来ているのかも、しれない。
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