あの加藤とあの課長*SS集
その翌日、淡い期待を込めてその店に再び赴くと、また彼がいた。

強いお酒をロックでがんがん飲んでいく。



「今日は女の人の格好なんだね。」

「え、あぁ、うん。」

「いいね、綺麗だ。」



この人、男心…、いや、女心を掴むのが上手い…。惚れちゃうじゃないのよ…。

なんて言いながら、昨日の時点でアタシはこの人に、惚れちゃってんのよ。



その日から、アタシはその店の常連になった。


とはいえ、その期間およそ1週間。

たった1週間のうちに、アタシはグングンその人に惹かれていった。


その人が男もOKなのかなんてこれっぽっちも気にせず、ただ一緒にいる時間を楽しんだ。


お酒を飲んで、世間話やその日あったことなんかの他愛もない話をした。

ただそれだけなのに、心は驚くほど満たされた。



そんな日が1週間続いたある日、彼はパッタリと姿を消した。


心にポッカリと穴が開いたようだった。

だけど連絡先も知らないし、ただの飲み仲間。アタシたちは、それだけの関係なのに。


何を期待してたのよ。

何を浮かれてたのよ。


現実、見なさいよ、アタシ…!
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