飛ばない蝶は、花束の中に


小さな頃、大きな家だと思ったけれど、大きくなった今も。

ようやく着いて見上げた家は、やっぱり大きいと、思った。



だけど。

なんだか、違和感がある。




門扉は、元々ない。

敷地内ギリギリの所のコンクリートが両サイド、綺麗に10cm幅で1mくらい、切り取られていた。

それだけなら良いんだけど……



向日葵が。

……真ん中に大きくひとつ咲くはずの向日葵が何故か、枝分かれをしているのか、たくさん、たくさん。


小さな花を、咲かせていた。




「…誰、が?」



タカノ?
いや、絶対に違う。

私はその向日葵を、睨みつけるように見つめる。



お兄ちゃんが、花を好きだなんて、聞いたことはない。


私の誕生日に、ひらひらと薄い花びらで、良い匂いのするピンクの花束をくれたりはしたけれど。



お兄ちゃんが、植えた?



…そんなわけ、ない。





< 10 / 328 >

この作品をシェア

pagetop