飛ばない蝶は、花束の中に
急に凍りついた、場の空気に、私までもが緊張した。
「……ぁ」
はっと我に返ったのか、慌てて誤魔化すような笑みを浮かべた“雅”は、瓶を持ったまま“タカノ”に駆け寄った。
飛び込むように正面から抱きついた“雅”は、笑みを無くした“タカノ”の不自然な視線を捉えて、なかなか応えない“タカノ”の腕を、自分に回した。
「深雪」
「…え?」
「……色々、あるんだ」
「………」
お兄ちゃんは、気にするなと言うけれど。
“雅”の髪をまさぐる“タカノ”の目は、ともすれば“雅”に噛みつきそうなほどに余裕を無くしていて。
ごめんね、怒らないで?
と。
囁く“雅”になだめられ、大きく息を吸い込んだ“タカノ”が目を閉じて“雅”の肩に顔を埋めるまでを、つい。
じっと見つめてしまった。