飛ばない蝶は、花束の中に
お前、親父に会いたいか?
と。
不意に訊かれたのは、まさに毛繕い、といった様子で“雅”の髪を梳く“タカノ”を眺めていた時。
イチャイチャするなら部屋ですればいいのに、と思っていた、時。
「…パパに?」
会いたい、かな…?
お兄ちゃんに会いたい一心で、パパに会うとか、思っていなかった。
というよりも、“克己”のママがいる以上、会いに行っちゃいけないと。
なんの疑問もなく、そう思っていた。
「…別に…いいかな」
視線は、なんとなくまだ“タカノ”に向けたまま、そう答えるけれど。
子供の頃とは違う。
パパが、私たち兄妹と、その母親たちの、面倒を見てくれてるのは知っているけれど。
子供の頃とは、違う。
私はお兄ちゃんみたいに、平気な顔をして会う自信、ない。