飛ばない蝶は、花束の中に
雅は。
私を背に隠す。
片手で私の手を、痛いくらいに握りしめ、片手で首筋を押さえた。
親指の付け根の辺りから感じる脈拍が、はじめ、それとは気が付かない程に早くて。
「…ごめ…っなさ………大丈夫…すぐ……」
呼吸が乱れたことを、隠すことも出来ないのに、雅は笑顔を作ったけれど。
私には。
号泣しているようにしか、見えなかった。
何か、水でも飲ませたかったけれど、ほんのわずかでも目を離せば壊れてしまう、と。
そう思った。
もしかしてお兄ちゃんは。
雅がこんなふうに。
無理をしなくて良いように?
しなくて、良いように……何だっけ…
一緒に住んだ?
抱いた?
“タカノ”にあてがった?
何か…違う気もする。
何か足りない気がする。
私は自分の携帯で、お兄ちゃんに電話をしようとして。
雅に、止められた。