飛ばない蝶は、花束の中に
雅の言った通り。
彼は、駅からさほど遠くはない、お兄ちゃんの家には入ることなく。
敷地のギリギリの所に立っていた“タカノ”の前で車を停めた。
「…………まだ、無理です」
「………………はい」
雅を助け降ろしながら低く囁いた声に、雅はひどく消沈して答えたけれど、引き渡された“タカノ”の腕の中で。
深く、深く。
深呼吸を、した。
「では私は、戻ります。友典には私から連絡をいたします」
「…あの………」
「駄目です。します」
「……はぃ」
彼は、雅が何を言いたいのか、常に解っているのだと思う。
きっぱりと、冷たく言い切ると、小さくため息をついて。
「……また、寿命が縮まりました。このままでは明日にでも死んでしまいそうです」
と。
“タカノ”の胸に張り付いたままの雅の頭に手を置いて、微笑んだ。