飛ばない蝶は、花束の中に
別にいいのに、と、可笑しそうに笑う“タカノ”の前に、強引に1000円札を置いた。
どうして私が“タカノ”に奢られなきゃならないのよ。
冗談じゃないわ。
「深雪ちゃん、ブラマンジュのお金も出しましたよね~…」
別にいいのに、と。
雅までもが可笑しそうに笑う。
なんなのよ。
自分が食べた物くらい、自分で払うのは当然でしょ!?
「1000円ぽっちの事で、負い目感じるのは嫌よ」
雑穀米のお茶漬けは、確かに美味しかったのだろうけど。
いつ来るかいつ来るか、と身構えていた“タカノ”の攻撃が全く来ないことに、私はいつまでも緊張が解けずに、正直。
食べた気はしなかった。
むっつりと黙り込んだ私を気にして、雅があれこれ手を焼いてくれたけど。
むしろ、たくさんの他人が居るのに落ち着いて席を立てる雅に、どこか腑に落ちないような、納得いかないような。
そんなものを感じていた。