飛ばない蝶は、花束の中に


リビングに戻ってからも。

私は“タカノ”から目を離せなかった。

苦笑しながら、じゃあ貰っとこうかな、と1000円札を受け取った“タカノ”の携帯が、鳴った。



「凱司さん?」

「あ、そうだね」



…本当に。
私、何しに来たのかしら。

お兄ちゃんは私を避けて。
こんな人たちと一緒に置かれて。



「うん、大丈夫だよ、2人共」


“タカノ”は落ち着いて、お兄ちゃんと話す。


2人共、って、私と雅?
それとも、“タカノ”と雅?


どちらにしろ、お兄ちゃんの心配は雅に向いている。

まさか、“タカノ”と私、ではないだろうから。



「ああそう。いや大丈夫だよ、獲って喰われそうに、ずっと睨まれてるけど」


あんたの妹、おんなじ目ぇすんのな。

と、私を見ないまま声を上げて笑う“タカノ”に、どきりとした。


私の、話?
雅の話……じゃなく?



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