飛ばない蝶は、花束の中に
当時の私は、日本に来たばかりで。
言葉もろくに解らない中での幼稚園生活に、毎日。
泣くまいと気を張っていたのを、覚えている。
同じ教室のガキどもは、私の金髪を物珍しげに、遠巻きに眺め、私の青っぽい瞳の色を、不躾にのぞき込んできた。
今思えば、幼い子供なのだから、ひと月もすれば、馴染めただろうとは思うし、髪の色も目の色も、珍しく感じるのは、当たり前な心理だったと思う。
それに、幼かったのは私も同じ。
髪も目も、大半が黒一色なこの教室を。
この国を。
気持ち悪い、と思っていたのだから。