飛ばない蝶は、花束の中に
「“雅”だ。俺の…メイド……だと」
言って聞かねーけど、まあ…ここに、住んでる奴だ。
「は!? メイド!?」
だって、この子、私と同じくらいじゃないの?
学校は?
家は?
親は?
湧いてしまった疑問を、そのまま飲み込んで、私は“雅”からふいっと顔を背けた。
彼女じゃ、ない。
奥さんでも、ない。
それは、良かった。
良かった、けど。
ならば、一緒に買い物になんか行かなくたって!!
この子がひとりで行けばいいじゃない。
「よ…よろしく、お願い…します?」
顔色を窺うような。
私の対処に困ったような、弱々しい挨拶を、私は無視した。
さすがに、怒られるかも知れない。
案の定、お兄ちゃんは、黙ったまま、眉を寄せ、“雅”の肩を抱くように。
悪いな、部屋に居てくれ、って。
その背をそっと、押した。