飛ばない蝶は、花束の中に
女の、勘。
お兄ちゃんの、“雅”の肩に触れた手が。
とても優しい。
いや、お兄ちゃんは元々優しいんだけれど、なにか違う。
“雅”の、仄かに甘い笑顔は、私から見ても可愛くて。
私が無視したことすら、むしろ無視されたような、居心地の悪さ。
私、穿ちすぎ?
彼女や奥さんという立場は、受け入れられないけど、メイドだって充分有り得ない。
“雅”が。
テーブルの隅に置いてあったノートと、ペンの類が入っていそうなポーチとを持って。
私を見たのがわかったけれど。
今更、目を合わすなんて。
したくなかった。
せっかく。
せっかく頑張ってたどり着いたのに。
せっかくお兄ちゃんに会えたのに。
こんなのって、ない。