飛ばない蝶は、花束の中に
“雅”が部屋を出て行くのを、目の端で捉えた。
お兄ちゃんが“雅”の頭を撫でたのも。
ドアが、閉まる。
「深雪」
「……」
お兄ちゃんの声が、ちょっと怒ってて。
私は、ごめんなさい、と小さく呟いた。
いきなり叱られたりしたら、思い切り喧嘩してしまいそうで。
…私の態度が叱られても仕方ないくらい悪かった事、わかってるし…
「………あとで…向日葵、片づけとけよ」
「……………」
…え?
それだけ?
確かにアレもいけなかったけど…無視したことじゃなくて?
「ひとりで来たのか?」
ひとつため息をついてから、ふわりと笑ったお兄ちゃんは、少しだけ嬉しそうで、少しだけ困り顔、だった。