飛ばない蝶は、花束の中に


「友典が一緒か?」

「ええ、私は送って来ただけなんです」


どうして玄関なんかに立っているのかと思ったら。

可哀想に、すっかり翻弄されてしまっていますが…色々と吹っ切れたかも知れません。

なんて。
私には、よく解らない事を、囁くように言った。


奥からは。

さっき雅を引き取った“友典”の声が。

勝手にほどいてはいけません!


と。
父親に似た口調で、私にしたら、そんな馬鹿な、と思うようなことを、叫んでいた。




「お兄ちゃん…」


“タカノ”可哀想だわ。

目の前で、自分をほどくかどうかの喧嘩を見せられるなんて。





「だって血が出てます!!」

「死にゃあしません!!」

「友典さんの基準もそこなんですか!?」

「とにかく凱司さんが戻るまで、そのままです!!」



ああ……ほら。
ボルテージ、上がっちゃってる。



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