飛ばない蝶は、花束の中に


私の覗き込んだ、バスルームの辺り。

比較的狭い空間に、手首を背中で交差させられたまま、ステンレス製のハシゴに拘束された“タカノ”が。


なんとも複雑な目で。
笑い泣き、していた。




「凱司さん!どうしてこんなにきつく縛ってあるんですか!酷いです!!」


雅は、私の後ろから覗き込んだお兄ちゃんを、なじる。

荷造り用の麻の、細い紐のような縄が、“タカノ”の手首の皮膚に、血を滲ませていた。


よく見れば、首にも紐がかかっていて。




「暴れたら…首締まるように…なってるの……?」

「ああ」


ああ…って…お兄ちゃん!?
そんなあっさり……!!




「ほどけないっ!!」


うわあん!とばかりに首の結び目に指を掛ける雅。

それを、引き離そうとしていた“友典”が、立ち上がり、お兄ちゃんに向き直った。




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