飛ばない蝶は、花束の中に


ぱちん、ぱちんと。
恐る恐る、細い紐を、切る。

やや首に食い込んだ紐は、ハサミの幅も危うくて。

雅は怖がって切れないんじゃないかと思ったのだけど。



「鷹野さん、0.2秒、我慢してください」


そう、言うやいなや刃先を突っ込み、ぱちん、と切った雅は。


「………血」


麻紐の、ザラザラした表面にこすれた皮膚が、薄く滲ませる血の色に。

何を思ったのか、いきなり舌を這わせた。


まだ、手首は後ろ手に縛られたままの“タカノ”に、抱き付いて。





「………雅さん」


一瞬、目を逸らした“友典”は、雅の手にあるハサミを取り上げ、“タカノ”の手首の紐を、切る。

自由になった、“タカノ”の腕は、巻きつく麻紐をまとわせたまま、雅の体を抱き締めた。




「……友典、来い。好きなの食ってけ」


お兄ちゃんは、私の視界を遮るように引き寄せると、“友典”を手招き、パリブレスト、あるぞ、と。

お前、好きだろ?なんて。


目の前の、ある意味“惨状”をちらりと見やると、小さく息をついた。



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