飛ばない蝶は、花束の中に
「深雪、先に好きなの取れ」
お兄ちゃんは。
私の問いに、髭の彼が答えた内容に異議はないのか、大きな箱を開けて、白い陶器の皿を並べた。
私は箱を覗き込んで。
「……雅はどれが好きなの?」
2個づつあるスイーツは、大小様々。
色も、たくさん。
きっと味も、色々で。
雅は選べないんじゃないかと、ふと思った。
「取ったもん勝ちだ」
どこかに含みを感じるのは、気のせい?
私は、オレンジの乗った、スクエアケーキをひとつ、皿にのせた。
「友典は?」
「…いえ」
「………食い切れねぇだろ?手伝え」
「あ、私はロールケーキがいいです」
からのコーヒーカップを並べながら、箱を覗き込んだ髭の彼は、わざとらしく無遠慮にそう言うと、息子に。
早く選びなさい、と、促した。