飛ばない蝶は、花束の中に


なかなか出て来ない、雅と“タカノ”を。
皆が気にしている。

苛々、というか、そわそわ、といった感じで、開けたままのドアを見やる友典を、また父親が静かにたしなめる。



「大丈夫ですよ」

「………」

「あの方たちは、互いの腹のうちを、言葉でぶつけ合わないと何もわからないんです」



子供なんですよ、と。

少しだけ辛そうに目を伏せた髭の彼に。

お兄ちゃんは視線を向けた。




「そういや宇田川、お前、わかってても言葉に出さなきゃならない事、言ってないらしいじゃねぇか?」


「…………は」



急に振られた話に、理解が追い付かなかったのか、髭の彼は、戸惑った目を、お兄ちゃんに向けた。



「寂しがってたぞ」

「………誰、が…でしょうか」



不安そうに揺れた、髭の彼を、面白そうに見やったお兄ちゃんは、私を見て急に。


「俺は、妹であるお前が大事だ。どこにいたって、気に掛けない時なんか、ない」



と。
真面目な顔で、言い切った。




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