飛ばない蝶は、花束の中に


なっ…
なに…いきなり!


私はどぎまぎと、思わず。
目を逸らした。


そんなこと……そんなことわかってるわよ!
試しに、みたいな勢いで言わないでよ!
恥ずかしいじゃない!




「…が…凱司さん…由紀は…そんな話まで!?」

「メル友だしな」

「めっ…メル友!?」



素っ頓狂な声を上げた髭の彼は、息子の顔を盗み見る。

知らない、とばかりに小さく首を横に振った友典は、あ、と声を上げた。




「そういえば……誕生日…」

「た…誕生日!?」

「………過ぎ、た…ような」


「…………ああっ!」



やだ…、なにこの親子…。

2人して、お兄ちゃんにかまけ過ぎなんじゃない?





「ケーキ食ったら、残り全部持って帰れ、馬鹿」

お前が忘れてる事、相当寂しかったみたいだぞ。
俺、思わず謝っちまったじゃねぇか。


なんて、可笑しそうに笑うお兄ちゃんとは裏腹。

髭の彼は、おろおろと携帯を取り出すと、しばし固まり。


がくりと、うなだれた。




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