飛ばない蝶は、花束の中に


「……怒って…るでしょうね」


視線は、私。


「…私に訊かないでよ……」

「もう、二週間過ぎてるんです…深雪さんなら……どうしますか?私、どうしたら…」



えぇ?
そんなこと自分で考えなさいよ!
いいオッサンが、なにオロオロしてんのよ!



「二週間、由紀から…何も聞いてません………」

誕生日だと言ってくれれば…!!!





「…素直に謝って……何かあげれば…良いんじゃない…?」

「そうでしょうか!」



やだもう…。

由紀って奥さんなんでしょう?それしか無いじゃない。

言わなくても覚えてて欲しいナンバーワンの“誕生日”を忘れちゃったんなら。


そんな……振られたみたいにオロオロしてないで、とりあえず謝らなきゃ。





「宇田川さん」


ごめんなさい、愛してます、好きでたまらないんです、だよ。



ふと。

私が、髭の彼のおろおろする姿に、軽く引いていると。


“タカノ”の声が、した。



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