飛ばない蝶は、花束の中に


ばつの悪そうな、“タカノ”に、視線が集まる。

背中に隠れるように、そばに立つ雅も、上目遣いに、お兄ちゃんを、見ていた。




「なんだ、もういいのか」


からかうような、お兄ちゃんの問いに、雅は小さく頷いて、ますます“タカノ”の背に、隠れた。

オロオロしていた髭の彼も、落ち着かせるように大きく息を吸ってから、ゆっくりと吐き出して。
すっくりと立ち上がった友典を、目で追った。





「…雅さん、いいんですか?」



静かに近寄り、視線を合わせるように訊いたのは、友典。

髭の彼は、ひどく心配そうではあるものの、成り行きを見守るつもりなのか、口をつぐんだ。




「この男は、雅さんの思うよりも、不誠実でしたよ?」


「……でも、あたしを好きでいてくれますから……」



雅は。
それが全てだとばかりに。

友典の、眉間にしわを寄せた顔に怯えたように、俯いた。




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