飛ばない蝶は、花束の中に
思わず。
本当に思わず、なんだけれど。
「単に、あんたを好きな男がいいだけなら、何も“タカノ”じゃなくたって良いじゃない」
そう発音した私の声は。
せっかく静まった“タカノ”の目に、苛立ちと。
雅に不安定とを、与えてしまったのかも知れないと、心配になったけど。
雅は、揺れる目で、ぐるりと私たちを見回して。
ちらりと“タカノ”を見上げてから、小さく首を傾けた。
「……あたし、が」
にこり、と。
“タカノ”に、嬉しそうな笑みを見せた雅は、私たちにも、同じ顔で。
あたしが、好きなんです。
鷹野さんが、良いんです。
あたしの好きなひとが、あたしを好きでいてくれたら、もう何にも、いらないの。
だから、と雅は。
華やかに嬉しそうに、頬を赤らめた。