飛ばない蝶は、花束の中に
空港を出て。
兼ねてから準備していた通りに、電車に乗った。
お兄ちゃんの家は都内だから、そんなに時間はかからない、と思っていたのに。
ものすごい密度の人と、下調べしたはずの駅の構内に、私はあっさり迷子になった。
行き交う人が、ひどく冷たく見えて、私は立ち止まって、持参した地図を広げる。
指で追いながら、再確認している最中に、私に英語で話しかけてきた人がいたけれど、私は英語はできないから。
日本語で、出たかった口を、訊いた。
「なんだ、日本語うまいね」
「……日本人だもの」
「えっ、そうなの!?」
見た目で決めないで欲しいよね。
私はちゃんと、お兄ちゃんの言うことを守って、日本語の練習を欠かさなかったし、お兄ちゃんが日本国籍を持っている日本人ならば、私だってそうなんだから。