飛ばない蝶は、花束の中に
見覚えのある道を、歩いた。
11歳の時以来、6年ぶりの道だ。
多少、記憶とは違う箇所もあったけれど、基本的にまっすぐな道だ。
ここまでくれば、迷う事もない。
そういえば、6年前。
さよならの挨拶をしに行った時にちょうどいた、あの白っちゃけた汚い金髪の男のひとは、まだいるんだろうか?
これからしばらく同居をする、と紹介された…名前はなんだっけ。
そう、タカノと言ったかも知れない。
睫毛の濃い目が、いかにも興味なさそうに私を見たことを、今でも僅かな恐怖と共に、覚えている。
どうして一緒に住むことになったのか、私には解らないけれど、子供心に“不良”だ、と。
このタカノというヤツには近付いちゃいけない、と。
ぼんやりと頬肘をついて、何をするでも、見るでもなく。
煙草を歯できつく噛みながら吸う彼を、何か怖いものとして、見ていたっけ。